コラム
公開日 2024.12.26
許容応力度計算を採用するメリットとは ④一部仕様規定を外すことができる
【本コラムは2025年4月の建築基準法改正後の内容です】
住宅の耐震性能をどのように考え設定すればいいか、悩んでいる設計者の方は少なくないように感じています。
そもそも許容応力度計算と仕様規定違いは?何が違うの??少し紐解いてみたいと思います。
大前提として住宅だとほとんどが以下のいずれかに当てはまることになります。
木造建築物の場合、2025年の法改正後でも300㎡未満かつ2階建て以下であれば許容応力度計算が必要ありませんが、仕様規定を守る必要があります。
仕様規定とは、施行令36条~80条の3に規定する構造方法を守ることです。
許容応力度計算は仕様規定の上位に規定されていて、3階建てや面積300㎡超で必須となり、もちろん2階建てなど仕様規定のみを守ればよい建物にも採用することができます。
許容応力度計算(通称 構造計算)を採用するメリットとは?
④許容応力度計算を行うことで、一部仕様規定を外すことができる。
構造に関する仕様規定で建築基準法施行令と関連する告示の中には以下のような文章が度々登場します。
「ただし、令第八十二条第一号から第三号までに定める構造計算によって構造耐力上安全であることが確かめられた場合に
おいては、この限りでない。」
これは、簡単に言い換えると、
この仕様規定は、許容応力度計算をすれば守らなくていいよ。
ということです。
実はこの仕様規定をはずせることが設計上、コスト上、結構大きな意味を持っています。
許容応力度計算により仕様規定を外せる例① 柱の小径規定
法改正後は柱の小径を計算できるようにExcelシートが公開されています。
このExcelで小径を求める方法は3つ示されていて、①②は柱1本あたりの負担面積5㎡以下、③は柱樹種と断面積に応じて自動計算された負担面積以下とするものです。
いずれの方法でも法改正後は、設計した建物の柱すべての1本あたりの負担面積を求める必要がでてきます。
これだけでも相当な手間がかかります。
さらに①②で要求している柱1本あたり負担面積5㎡以下にするというのは意匠設計上、大きな制約を受けます。
③の場合、すぎKD、1階外周柱、105角の条件で建物重量により負担面積5~8㎡程度という算定になります。
①②よりは余裕がでますが、リビングで大開口に挟まれた外周柱などは負担面積が納まらない可能性がありそうです。
柱を120角にしたり樹種を変えて検討することは可能ですが、正角材のみが対象です。
許容応力度計算の場合、同じ条件でも負担面積を大きくすることが可能です。
それは仕様規定が一律の負担荷重なのに対し、許容応力度計算では梁の掛け方や上階柱の位置によって実態の荷重で計算するからです。該当柱の荷重が大きすぎる場合には梁の掛け方を変更し、違う柱に荷重を流すことで該当柱の負担荷重を減らすことができます。
また偏平柱を活用し、壁内に納まる範囲で柱断面を増すこともできます。
このように仕様規定ではできないことができるようになるのが許容応力度計算のメリットです。
許容応力度計算により仕様規定を外せる例② 基礎の立ち上がり規定
実はこの規定、結構厄介です。以下、告示1347号の抜粋です。
「木造の建築物若しくは木造と組積造その他の構造とを併用する建築物の木造の土台
の下又は組積造の壁若しくは補強コンクリートブロック造の耐力壁の下にあっては、
連続した立上り部分を設けるものとすること」
この一文、べた基礎に対する記載なのですが、何が厄介かというと
「土台の下には連続した立上りを設ける」
ということです。
「あれ、人通口や収納建具下には土台あるけど、基礎立ち上がりはないな」
そう思った方、少なくないと思います。連続した基礎立ち上がりとは地中梁も含みますので、
人通口の下に地中梁があれば問題ありません。しかし、収納建具下にもすべて地中梁を設けているビルダーさんは多くないのではないでしょうか。その状態は告示に抵触してる可能性が高いです💦
でも、許容応力度計算を行った場合、この仕様規定はずせます!
土台はあるけど、あっちもこっちも地中梁になるのはちょっと・・・
許容応力度計算で不要な地中梁を削減することで、仕様規定に比べて工事が削減できる場合すらあります。
許容応力度計算は追加でお金がかかるし、手が出しにくいなぁと思われている方も少なくないと思いますが、2025年法改正により仕様規定でもそもそも設計コストが上がってしまうこと、仕様規定をはずして意匠設計面で自由度が増すこと、場合によっては許容応力度計算で工事費が削減できること、などメリットは多くあります。
法改正を機に許容応力度計算を取り入れてみてはいかがでしょうか
他メリットについては下記記事を参照してください。
耐震性能の裏付けが取れる。
耐震等級2・3に対応でき、各種認定を受けることができる。
許容応力度計算を採用する他メリット③
壁量及び水平構面の不足・過剰が明確になり、適切な状態にすることができる
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