コラム
公開日 2025.02.22
木造における水平力(地震・暴風)の作用と伝達
地震や台風が起きるとどこに水平力がかかり、その力はどこへいくのか。
建築物に作用する力は大きく鉛直力と水平力に分けられます。
鉛直力は積載荷重や積雪荷重で、梁の曲げやたわみ、柱への軸力など比較的イメージしやすい応力として伝達していきます。
水平力は地震力や風圧力のことで、木造建築物の様々な箇所に多様な応力を発生させ、鉛直力と比べイメージがしづらい場合があります。
今回は水平力の行き先について掘り下げてみます。
水平力とは
建築構造計算において水平力は建築物に作用する水平方向の外力の総称となります。
水平方向の外力として、地震力、風圧力、土圧、水圧などがあげられます。
今回はどの建築物にも作用する、地震力、風圧力について取り上げます。
水平力による建築物の変位
水平力が建物に作用すると基礎や土台が固定された状態で1階軒桁レベル、2階軒桁レベルが水平方向に変位します。それにより鉛直面は平行四辺形に変形していきます。この鉛直面の平行四辺形への変形と軒桁レベルの水平方向の変位量増加により最終的に建築物が倒壊します。
この変形を抑えるために必要なのが耐力壁です。
耐力壁があることにより鉛直面が平行四辺形へ変形していくのを防ぎ、結果、軒桁レベルの水平方向の変位量を抑えようというのが多くの木造に取り入れられている耐震の考え方になります。
水平力を負担した耐力壁の応力はどこへいくのか
外力が作用した場合、大きくは以下のいずれかでエネルギーが減衰して最終的に0になります。
①建築物の様々な部位を通じてエネルギーが地盤に伝わる
②建築物のどこかの部分を破壊することでエネルギーが消費される
③建築物を揺らすことでエネルギーが消費される
②でエネルギーが消費されては困りますよね。ですからきちんと計算して①の方法で水平力を安全に地盤に伝えることが、構造計算の大切な仕事になります。
ちなみに③は社寺建築などの伝統建築物などで採用される場合があります。イメージとして風に揺られる柳の木が分かりやすいかもしれません。しなやかに変形することで水平力を受け流していきます。
水平力はどこを伝達して地盤に到達するのか
水平力による変形を耐力壁が抑えたのち、地盤まで力が伝達するルートを簡単に説明すると以下の順になります。
生じた応力によって各部が破壊・変形されないことを前提とします。
■耐力壁が取り付く上向き応力が生じる側の柱
①柱下部が横架材から持ち上がる引抜力、柱の上部の横架材が柱から持ち上がる引抜力になる
②①の柱の持ち上がろうとする力で土台が浮き上がろうとする。
③浮き上がろうとする土台を抑えるアンカーボルトの座金の表面積で土台のめり込み破壊を抑える
④土台を抑えるアンカーボルトと柱の距離で土台に曲げ応力が発生する
⑤上記の引き上げ力によりアンカーボルトに引張力が生じる
⑥⑤の引き上げ力で基礎梁に上方向の曲げ応力が発生する
⑦建物全体が丸ごと横倒しにならない
この全箇所が破壊・変形しないことで水平力を地盤に伝達することができます。結構、経由する箇所が多いですよね💦
ちなみにホールダウン金物で柱と基礎を緊結すると②の次が⑤になり、力の伝達が簡素になります。
■耐力壁が取り付く下向き応力が生じる側の柱
①柱の軸力に下向き軸力が発生する
②土台に柱小口の断面積でめり込もうとする
③下向きに押す力で基礎梁に曲げ応力が発生する
④地盤が下向きに押す力以上の地耐力が存在する
引き上げ側と比べると伝達経路がすくないですね。
許容応力計算を導入する重要性
許容応力度計算では上述の力の伝達箇所全てを検討し、変形や破壊に対して安全性を確認します。
一方、建築基準法の仕様規定は25年法改正で細かくなったものの、上記の一部しか検討しません。これが建築基準法が「最低の基準を定める」と謳っている部分かなと思います。
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