公開日 2025.06.12
【2025年4月義務対象拡大】省エネ適合性判定とは?対象建築物から申請の流れまで徹底解説
近年、環境問題やエネルギー資源問題を背景に、建築物における省エネルギー対策の重要性が高まっています。日本では、建築分野でのエネルギー消費量の抑制のため、省エネ基準が定められました。「省エネ適合性判定(省エネ適判)」とは、建築物がその基準に適合しているかを判断するものです。
2025年4月に行われた法改正により、省エネ適合性判定の義務対象が広がりました。今までは対象外だったものでも、「省エネ適合性判定が必要だった」という事態も起こりかねません。設計者や建築主にとって制度の正しい理解と対応がますます重要になっています。今回の記事では、省エネ適合性判定の概要から対象建築物、具体的な申請の流れについて解説します。
省エネ適合性判定(省エネ適判)とは?
「建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律(建築物省エネ法)」の施行により、特定の建築物を新築・増改築をする際、その建築物の省エネルギー性能が基準に適合しているかどうかの判定を受けることが義務付けられました。この判定が、省エネ適合性判定(省エネ適判)です。
工事着手前に、「建築物エネルギー消費性能確保計画」を所管行政庁または登録建築物エネルギー消費性能判定機関に提出し、適合性判定を受けます。基準に適合し、適合性判定通知書が交付されると、工事に着工することができます。
■なぜ今、省エネ適合性判定が重要視されるのか?
現在、日本ではエネルギー問題が深刻な課題となっています。地球温暖化対策や脱炭素社会の実現に向け、日本のエネルギー消費量の約3割を占める建築物分野において、省エネ対策が講じられました。
建築物のエネルギー消費性能の向上を図るため、「建築物のエネルギー消費性能の向上等に関する法律(建築物省エネ法)」が制定・改正されました。この法律の中には、省エネ適合性判定の義務化も含まれています。
さらに、法改正以外でも、エネルギー価格の高騰により冷暖房費コストが抑えられる省エネ住宅が注目されています。近年では、省エネ基準(ZEH基準)を満たす住宅を対象に、補助金や減税などの優遇措置がとられています。このように、省エネを意識した建造物は、必須であると同時にメリットも多くあります。
■2025年の法改正で適合範囲が拡大
2025年4月に建築物省エネ法が改正され、省エネ基準適合の対象となる建築物が拡大されました。これまでは、住宅・小規模非住宅に対しては、「届出義務」または「説明義務」のみが求められていました。しかし、法改正後は、原則としてすべての新築住宅・新築非住宅に省エネ適合性義務が課せられます。
■省エネ適合性判定に適合していないとどうなる?
建築予定のものが適合範囲に含まれているにも関わらず、省エネ基準に適合していない場合、確認済証や検査済証が交付されず、着工することができません。これによって、工期の遅延が起こる可能性があるため、建築主や設計者には早い段階での省エネ適合性判定の申請・準備が求められます。
■増改築における判定の必要性
法改正前は「増改築後の建築物全体」が適合判定の対象でしたが、改正後は、増改築を行う部分のみが省エネ基準適合の対象となります。
具体的には、
・増改築部分の壁・窓・屋根などに、断熱材や窓等を施工する
・増改築部分に空調や照明灯の設備を設置する
これらを施すことで、増改築部分への基準適合が必要です。
省エネ適合性判定の流れ
省エネ適合性判定は、主に以下の手順で進めます。
1.建築確認申請の提出
【建築主→建築主事または指定確認検査機関】
建築主は、まず建築主事または指定確認検査機関に対して建築確認申請を行います。
2.省エネ計画書類提出
【建築主→所轄行政庁または登録省エネ判定機関】
建築確認申請の後、所管行政庁または登録省エネ判定機関に「省エネ計画書類」を提出し、審査を依頼します。
3.省エネ適合判定通知書の交付
【所轄行政庁または登録省エネ判定機関→建築主】
所管行政庁または登録省エネ判定機関が提出書類を審査します。そこで、省エネ基準に適合していると認められた場合、「省エネ適合判定通知書」が建築主に交付されます。
4.省エネ適合判定通知書の提出
【建築主→建築主事または指定確認検査機関】
建築主は、3で受け取った「省エネ適合判定通知書」を建築主事または指定確認検査機関に提出します。
5.確認済証の交付
【建築主事または指定確認検査機関→建築主】
建築主事または指定確認検査機関が、「省エネ適合判定通知書」と「建築確認申請書」の整合性を確認し、問題がなければ「確認済証」を建築主に交付します。
この確認済証の交付をもって、着工が可能となります。
なお、省エネ基準適合が義務付けられている建築物については、完了検査の際にも、省エネ適合性判定を行った計画書に基づいた検査が行われます。
省エネ計算の方法
省エネ計算とは、建物が消費するエネルギー量を計算し、国が定める省エネ基準に適合しているかを確認するための方法です。建物の断熱性能や設備機器のエネルギー効率を分析して、省エネ性能を数値化します。
この計算では、各住宅設備のエネルギー消費量を基に、冷暖房、給湯、換気、照明、などの設備エネルギー消費量(BEI)を算出します。
BEI = 設計一次エネルギー消費量 ÷ 基準一次エネルギー消費量
省エネ適合判定を受けるためには、省エネ計算の結果、BEIが以下の基準を満たす必要があります。
分類 |
規模 |
用途 |
BEI基準 |
住宅 |
– |
新築および既存建築物の増改築 |
BEI≦1.0 |
非住宅 |
中・小規模(2,000㎡未満) |
– |
BEI≦1.0 |
大規模(2,000㎡以上)※ |
工場等 |
BEI≦0.75 |
|
事務所等・学校等・ホテル等・百貨店等 |
BEI≦0.8 |
||
病院等・飲食店等・集会所等 |
BEI≦0.85 |
※大規模な非住宅建築物の省エネ基準は2024年4月から変更となりました。
参考:大規模な非住宅建築物の 省エネ基準が変わります | 国土交通省
省エネ適合性判定の必要書類
省エネ適合性判定には、主に下記の資料が必要です。
書類 |
|
1 |
いずれかの書類 ・通知書 ※計画通知物件の場合 ・変更計画書 ※計画変更の場合 ・軽微変更該当証明申請書 ※軽微変更該当証明の場合 |
2 |
添付図書 設計内容説明書、仕様書、各種図面(付近見取図、配置図、各階平面図、床面積求積図、立面図、断面図又は矩計図、各部詳細図など)、用途別床面積表、各種計算書など |
3 |
委任状兼同意書 |
4 |
連絡用書類 |
上記書類の他に、地域の所管行政庁が必要とするものがある場合は、記載以外の書類の用意が必要です。
よくある質問(FAQ)
Q.既存建築物も適合性判定の対象になる?
原則として、既存建築物には省エネ適合性判定の義務はありません。ただし、増改築を行う場合には、増改築を行う部分に省エネ基準適合が求められます。
Q.適合性判定の対象外となる建築物とは?
法改正により、適合義務の対象が拡大したことにより、申請の増加が見込まれることから、申請者・審査者の負担を減らす目的で、「適合性判定の手続き・審査の合理化」のため、省エネ基準への適合性審査を不要とする建築物があります。
下記の建築物は、省エネ基準への適合性審査が不要です。
・都市計画区域・準都市計画区域の外の建築物(平屋かつ200㎡以下)
※建築確認の対象外の建築物(第12条改正)
・都市計画区域・準都市計画区域の内の建築物(平屋かつ200㎡以下)で、建築士が設計・工事監理を行った建築物
※建築基準法における審査・検査省略の対象である建築物(第11条第2項改正)
また、省エネ基準への適合性審査が容易な建築物は、省エネ適判手続きが省略されます(第12条改正)。 ※ 仕様基準による場合(省エネ計算なし)等
参考:【建築物省エネ法第11・12条】 適合性判定の手続き・審査の合理化について | 国土交通省
まとめ:省エネ計算は、専門家にお任せください!
省エネ適合性判定は、法令に基づく厳密な審査制度であり、建築計画においては早い段階からの準備と的確な対応が不可欠です。中でも「省エネ計算」は、審査の根拠となる非常に重要な工程です。正確な計算には、高度な専門知識と経験が求められます。
制度の内容を正しく理解し的確な省エネ計算を行うことが、省エネ適合性判定取得と、その後の建築計画全体のスムーズな進行に繋がります。建築を円滑に行うためにも、省エネ計算はぜひ専門家にお任せください。
「省エネ計算をしたいが、社内に対応できる専門担当者がいない。」「申請機関とやりとりする余裕がない。」といったお悩みをお持ちの方は、ぜひ一度、当センターにご相談ください。省エネ計算から申請サポートまでワンストップで対応いたします。
▼木造構造省エネ計算サポートセンターの「省エネ計算代行サービス」
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監修者:省エネ計算サポートセンター
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